解剖生理学解説:赤血球沈速度は慢性炎症時になぜ亢進する(速くなる)のか

今回の記事で学べること

皆さんこんにちは。今回は炎症マーカー、特に慢性炎症のマーカーとして知られる赤血球沈降速度(赤沈)について解説していきたいと思います。なぜ慢性炎症時に赤沈が速くなるのか、原理を知ると大変納得できる内容となっています。

短めかつ図が多めの内容となってますので5分もあれば読めると思います。

赤血球は負に帯電しており反発しながら沈降していく

まず赤血球は以下の図のように負に帯電しています。

沈んでいくときに赤血球はお互いに反発しながら沈んでいきます。そのため今回の炎症とは話がそれますが、赤血球の数が多い場合と少ない場合ではそれぞれ赤沈はどうなるでしょうか?

正解は赤血球数が多いと反発が多くなるので赤沈は遅くなります。逆に赤血球数が少ないと反発が少なくなり、赤沈は速くなります。

慢性炎症では血漿タンパク分画はどうなるのか

慢性炎症ではγグロブリンの増加が見られます。その他γグロブリンの増加はB細胞の腫瘍である多発性骨髄腫や悪性腫瘍など他にも増える要因はありますが、今回は慢性炎症というテーマでお話ししていきます。

γグロブリンは抗体が含まれます。抗体は炎症後すぐに増えてはきません。炎症後すぐに増加するものとしては白血球数、CRPがあり、また白血球分画の変化が急性炎症ではみられます。

慢性炎症ではγグロブリンが増加します。γグロブリンにはIgG,IgA,IgD,IgE, IgMといった抗体が挙げられます。この中でも特にIgGの増加は慢性炎症でみられます。このγグロブリンの増加が赤沈にどうかかわっているのかを次の項目で見ていきます。

炎症により赤血球沈降速度は速くなる

上で述べたγグロブリンは血漿タンパク分画ではどこに位置しているでしょうか?

ー(負)に近いところに泳動されています。つまりγグロブリンは+(正)に帯電しています。つまりγグロブリンが血漿中に増加すると以下の図のようになります。

+(正)に帯電したγグロブリンがー(負)に帯電した赤血球を引き寄せあっています。この状態で沈んでいくので速く沈んでいくことになります。

つまり慢性炎症が起こると赤血球沈降速度(赤沈)は速くなるということがわかります。

まとめ

まとめると

  1. 赤血球は負に帯電しており、反発しながら沈んでいく
  2. 慢性炎症では正に帯電したγグロブリンが増加する
  3. γグロブリン(+)が赤血球(-)を引き寄せあって沈むため赤血球沈降速度は速くなる

ということです。ご覧いただきありがとうございました!

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