解剖生理学解説:血漿タンパク質と浮腫について

本記事から学べること

こんにちは。今回は以下の疑問を解決していきたいと思います。

  1. 血清と血漿の違いは?
  2. 血漿タンパク質には何が含まれるの?
  3. 膠質浸透圧と浮腫

1.については私が学生の頃かなり長い間覚えられなかったことがあり、血漿タンパク質のお話の前に少し挟むことにしました。

2.と3.は授業で習った時によく理解できなかったのですが、理解できたときに面白いと感じた内容です

血清と血漿の違いは?

下の(   )の中どちらが正解でしょうか?

血漿とは抗凝固薬を(加えて・加えずに)採血された血液を遠心分離したときの液体成分(上清)である。

正解は「加えて」です。逆に血清は抗凝固剤を加えずに遠心分離したときの液体成分(上清)になります。血清分離の際は凝固させてから遠心分離するのが鉄則です。そして血漿との違いは凝固因子であるフィブリノゲンが血清では消費されて減少しているという点ですね。

検査に血清を使うのか血漿を使うのか検査項目ごとに違います。わかりやすい例を挙げると血球検査(赤血球数や白血球数、血小板数などなど)を調べたいときには凝固させてしまったら測定できませんから抗凝固薬入りに採血管を使います。

血漿タンパク質には何が含まれるの?

まず以下の図をご覧ください。血漿タンパク質を電気泳動したときの各分画です。

血漿タンパク質にはアルブミン、グロブリン(α、β、γ)、フィブリノゲンが含まれています。

+と書いている方にはー(負)の電荷を帯びている分子が、-(負)と書いている方には+の電荷を帯びている分子が見られます。例えばアルブミンはー(負)の電荷を帯びているので、+の方に引っ張られているということを意味しています。

アルブミンは膠質浸透圧の発生に重要です。膠質浸透圧は血管内から血管外(組織)へ水分が漏出しないようにするために働いています。

浸透圧とは濃度の違う2つの溶液が膜を介して隣り合っているとき、濃度の薄い方から濃い方に水分が出ていくというものです。浸透圧πを求める式は

πV=nRTです(πは浸透圧、Vは体積、nはモル(mol)、Rは気体定数、Tは温度)

これを両辺をVで割って変形するとπ=n/V×RTとなります。n/Vはモルを体積で割っているのでモル濃度になります。気体定数は一定ですし、温度もほぼ一定なのでつまり浸透圧πはモル濃度によって変化するということがわかります。

血液中のアルブミンが低下すると血漿タンパク質の濃度が下がります。すると、上の式のn/V(モル濃度が低下して膠質浸透圧が低下します。もちろん他のタンパクの影響によっても膠質浸透圧は変化しますが、ここで押さえておきたいのは、アルブミンは血漿タンパク質の中で1番量が多く、分子量が小さいということです。

モル(mol)は質量÷分子量で求めることができます。つまりモルが大きくなるのは質量がより大きくて分子量がより小さい分子です。上に書いたようにアルブミンは血漿タンパク質の中で一番量が多く、分子量が小さいのでモルが大きくなるのです。そのためアルブミンが膠質浸透圧の維持に最も重要ということになります。

フィブリノゲンは凝固因子です。凝固の記事はまた別で書きたいと思うので、今回の記事ではフィブリノゲンは血漿だから残っているということさえ意識してもらえればと思います。血清では凝固因子は消費されて減少します。

次にグロブリンですが、この中でもまず覚えておいてほしいのはγグロブリンが抗体であるということですね。抗体は血漿タンパク質の中では最も負に近い+の電荷を帯びた分子です。これが炎症の指標となる赤血球沈降速度に関わってきます(現在別で記事作成中)。

膠質浸透圧と浮腫

2.の項目で膠質浸透圧について説明しました。そしてそれがアルブミンによる影響が最も大きいというお話もしました。

ではこのアルブミンが低下するとどのようなことが起こるのか。浮腫の原因の一つであるアルブミンの低下について説明して今回の記事の締めくくりとしたいと思います。

まずアルブミンの低下により血漿タンパク中のモル濃度が低下し、膠質浸透圧が低下します。すると、血管内の濃度が周りの組織より薄くなります。これによって浸透圧の原理より薄い方の水分が濃い方に漏出するのでつまり血管内の水分が血管外に漏出します。これによって浮腫ができます。

ご覧いただきありがとうございました。

 

タイトルとURLをコピーしました