はじめに
本記事をご覧いただきありがとうございます。私は臨床検査技師で大学院修士課程、博士課程を卒業し、今はアカデミアで研究者として働いている研究者です。今回は臨床検査技師が大学院に進学するメリットとデメリット、そして私が進学を決めた理由について書いていきます。
学部生の頃は病院で臨床検査技師として働きたいのか、企業に行って研究がしたいのか、アカデミアに残って研究したいのか、もはや全く違う道に進みたいのかとても悩みました。多くの臨床検査技師の方含め理系の学部生/大学院生は進路に悩むかと思います。
まず実際に修士を卒業した今感じたメリットとデメリットについてお伝えします。
修士に進学するメリット①将来の選択肢が一気に広がる
大学院に進学せずに卒業した場合は臨床検査技師の免許があれば病院就職をすることは可能です。ただ最近では大学病院や大きい病院では修士卒も増えてきているのも現状です。絶対に必要というわけではないですが、その後のキャリアアップにはつながりますし、病院就職の選択肢も広がります。
また、臨床検査技師の中には企業の研究開発職を目指している方もいると思いますが、その場合にも修士卒であることはメリットになります。大学院に進学しないとなかなかしっかり時間をかけて研究をする機会はないことが多いです(特に臨床検査技師の場合は病院実習など資格取得に向けた授業も多いため)し、修士での研究経験は間違いなく就活で活きてきます。
さらに、アカデミアで働く場合は大学院卒は必須と言っても良いと思います。大学教員になる場合には博士課程まで行く必要はありますので、その場合はまず当たり前ですが修士は卒業する必要があります。今後もしかしたらアカデミアで研究したいと思った時に修士を卒業していれば博士課程に後から入ることを考えることができます。社会人で博士課程に来る人はそれなりに見かける印象ですが、学部で卒業後修士は社会人になってしばらくしてから入る方はあまり見かけません(私が知らないだけでしたらすみません)。また、アカデミアで技術職として働く場合も大学院卒は大きなアドバンテージになります。
修士に進学するメリット②最新の研究を知ることができる
大学は教育の場でもあり、研究の場でもあります。ただ、学部生の頃は教育はしっかり受けることができますが、自主的にバリバリ研究室に出入りして取り組んでいない限り研究に触れる機会はわずかです。教科書に書いていること以外にわかっていないことがまだまだ沢山あることに研究を始めてから気づきました。論文を読んだり実験したりする中で研究を知ることができるのは考える幅が広がるので、今後の人生の大きな財産になります。また、最新の研究を知ることで今何が社会で求められているのかや、何が研究の課題になっているのかを知ることができるのも興味深いです。
修士に進学するデメリット
私にとっては修士の2年間はデメリット以上にメリットの方がはるかに大きかったので、長い人生を考えると行って損するものではないと思っています。ただ、デメリットとして挙げるとすれば学費がかかるということです。大学院に行くことで追加で2年分の学費がかかってしまいます。また、就職が2年遅れるのはデメリットとも考えられますが、自分が何が向いているかを見極めるための2年間と考えればメリットとも言えます。
私が修士課程に進学した理由
学部生の時の私は何がやりたいかが明確ではありませんでした。臨床検査技師としての仕事もやりがいはありそうだと実習に行った時に感じた一方で学部生の頃の研究室配属では研究も面白いと感じてはいました。
そもそも自分は何がやりたいのか、何が向いているのかはっきりしない中だったので上述の通り選択肢を広げるためにもまず修士は行っておきたいと思いました。当時から企業の研究職や開発職に就職したい場合には大学院の修士課程までは行くべきだと考えていたのでまずは修士までは行ってみて自分が何をやりたいのか、研究に向いているのかを見極めたい気持ちもあり大学院進学を決めました。修士に進学を決めた頃は「大学院に進学=病院就職はしない」ものだと思っていたのですが、修士卒業後病院に就職される先輩もたくさんいたのでその辺も安心して進学できるきっかけになりました。
また、臨床検査技師を取得した大学院生であればクリニック等で臨床検査のアルバイトもすることができます。実際に研究をしながら臨床検査のアルバイトもやりながら過ごしました。修士に行ってみて2年間での学びは臨床での勉強とは違いましたが、考える力や多くのことを並行してこなしていく力、一つのテーマを遂行してまとめて発表する力は学部生の頃よりは身についたので、研究だけでなく病院に就職した場合にも仕事に活かせそうなことは身につけられたと感じました。
また、大学院に進学することで修士の学位がとれるのも一つの魅力ではありました。キャリアアップや転職したいと思ったときにも役に立ちますし、もし今後何かのきっかけで博士課程に進学したいとなったときには修士を持っていれば研究の世界に戻りやすいかなと考えていました。
まとめると、この先どういう進路選択をするにも修士には進学しておいた方が良いと考えたのが大きな理由でした。
若干の不安があったとすれば、修士の2年間大学院生活を送ってから病院就職した場合に、すぐ病院就職した人よりも臨床経験が少ない状態になることでした。アルバイトで臨床のお仕事はできるのでそこで臨床検査技師としての技術をすっかり忘れるということはありませんが、本業でやってらっしゃる方の経験値には到底及ばないだろうと感じていました。ただ実際に修士で卒業して病院就職した人の話を聞くとむしろ大学院で研究を通して考える経験は病院の仕事でも活かせると知り心配は必要ありませんでした。
結局修士で就職ではなく、そのまま博士課程に進むことになったのですが、それは臨床検査技師が大学院に進学しようと思った理由(博士課程編)で書いていますのでぜひこちらもご覧ください。